SNSが普及してきたことによって誰でも簡単に写真を投稿できるようになりました。
それに伴ってカメラブームが起きて、カメラを趣味にする方も増えたのではないでしょうか。
一眼レフを始める上で欠かせない知識の一つにF値(絞り値)というものがあります。
F値を調整すると、一眼レフならではの背景をぼかした写真や暗い場所でも明るいの写真を撮ることができます。
設定の要になるのでしっかりマスターしましょう。
そもそもF値(絞り値)とは何か
Fとは”Focal”の頭文字を撮ったもので、通常絞り値はF値と称されます。
絞りとはレンズから入る光量を調整する部品(羽根)のことを言います。
レンズを構成する部品の一つであり、レンズ選びのときにも重要な指標です。
よってカメラ本体の性能とは関係なく、レンズを変えれば設定できるF値も変わってきます。
F値を簡単に言うと、「どれくらいの光量をカメラに取り込ませるのか」を決める設定です。
F値を小さくすると光を多く取り込み、反対にF値を大きくすると光を少なく取り込みます。
F値はF1.4~F32と数値で表されます。
F値の変わり方
F値は下記の図のように変わります。
このF値を隣に動かすと、「絞り」の穴の面積やカメラに入る光量を調整できます。
またこれらのF値を隣のF値に変更することを1段小さく(大きく)するといいます。
まずは代表的なF値の値と、F値を1つ隣に動かすとカメラに入る光量が2倍または1/2倍になることを覚えましょう。
カメラによってさらに細かくF値を設定できるようになっています。
私の持っているNikonのデジタル一眼レフカメラでは、F値は1/3段ずつ変わります。
F値の増え方を見てみると、1.4 → 2 → 2.8 → 4と中途半端な増え方をしています。
2倍ずつ増えてくれれば分かりやすいのに、なぜこのような増え方をするのでしょうか。
それはレンズを通過する光量は、絞り穴の面積で決まっているからです。
F値は絞り穴の直径(有効口径)を表しているので(実際は「焦点距離/有効口径」)、絞り穴の面積は以下の式で表されます。
絞り穴の面積=(半径)×(半径)×3.14=(F値)× (F値)× 3.14 ∝ 光が通過する量
すなわちカメラに入る光量は、F値の2乗に反比例します。
F値が√2倍になれば絞り穴の面積が1/2倍、F値が2倍になれば絞り穴の面積が1/4倍になります。
なので、F値は√2=1.4倍ずつ隣に動くのです。
F値の設定を調整すると写真はどう変化するのか
F値はレンズから入る光量を調整する数字です。
F値を小さくすると、ピント以外の場所がぼけやすくなり、また光量が多くなるため明るい写真が撮影できます。
F値を大きくすると、ぼけにくくなり全体にピントがあった写真が撮影できます。また光を取り込む量が少なくなり、暗い写真が撮影できます。
同じ被写体でF値の設定を変えてみよう
F値を変えることで、《ぼかし》と《明るさ》が調整できます。
ぼかしとは、ピントが合って見える範囲のことです。
F値を小さくするほどピントの合って見える範囲は狭くなり、大きくするほどピントの合っている部分の前後もピントが合っているように見えます。
ピントを合わせた位置に対して、その前後のピントが合っているように見える範囲を「被写界深度」といいます。
F値によるボケの変化
写真は手前のトラックにピントを合わせています。
F1.8ではピント以外の背景がぼけているのが分かります。
F4ではまだ若干ぼけていますね。
F8くらいから後ろの花瓶にもピントが合い始めて、F16では背景まですっきり写っています。
F値による明るさの変化
F1.8 F4 F8 F13
F値よって明るさが変わるのが分かると思います。
明るさを調整する方法は他にもシャッタースピードや露出補正、ISO設定などがありますが、明るさはF値によっても大きく影響を受けることを知っておきましょう。
F値はレンズによっても値が変わってくる
F値を決める「絞り」はレンズを構成する部品の一つなので、設定できるF値はレンズの種類によって変わってきます。
つまりF値はレンズの性能を表す一つなんですね。
F値を小さくすればするほど背景をぼかした写真を撮ることができます。
ただしカメラを購入するときに付いてくる標準レンズではF4が最小の場合が多く、F4では思ったほど背景がぼけないことがあります。
背景をぼかした写真を撮りたければ、F値を小さく設定することができるレンズを選びましょう。
主に「単焦点レンズ」と呼ばれているものはF値を小さく設定できるのでおすすめです。
撮影時はF値を下げたほうがいいの?上げたほうがいいの?
F値が下げて撮るのがいいのか、それとも上げて撮るのがいいのかという問題に明確な答えはありません。
被写体や写真のイメージ、好みによって変わってくるからです。
F値は《ぼかし》と《明るさ》を調整するので、この値にするとこんな感じの写真が撮れるという感覚を身に着けるようにしましょう。
F値の設定を下げて撮影するシーン
F値を下げて撮影するシーンにはどのようなものがあるでしょうか。
周りをぼかして撮影 光源をぼかして撮影 暗い場所で明るく撮影
F値を下げた方がいいシーンは、被写体を強調したい場合です。
被写体以外の背景をぼかすことで、ピントのあっている被写体を強調します。
また、F値を下げてイルミネーションなどの光源を撮影することで、柔らかく幻想的な写真を撮ることができます。
またF値を下げると光を多く取り込むことができるので、暗い場所で明るい写真を撮ることができます。
よってISOを上げずに明るい写真を撮りたい場合に用いられます。
F値が小さいとピント以外の被写体がぼけてしまう可能性がありますが、風景などを撮りたい場合はあまりボケ感が強く出ないのでそこまで心配はいりません。
F値の設定を上げた方がいいシーン
F値を上げて撮影するシーンにはどのようなものがあるでしょうか。
風景をスッキリと撮影 手前から奥までピントを合わせて撮影
このような場合はF値を上げて撮影することをおすすめします。
F値を上げるとファインダーいっぱいに広がった風景全体にピントを合わせたスッキリした写真を撮ることができます。
シーン別F値の目安
撮影したいシーン毎に目安となるF値をまとめてみました。
目安として覚えておくと、状況に合わせてそのF値を基準に調整することができます。
基準値に対してぼかしたい、もしくは明るくしたいのであればF値を下げる、全体的にくっきりさせたいのであればF値を上げるようにしましょう。
ボケを活かした柔らかい印象の写真が撮りたい《F1.8》
ボケを活かした写真を撮るのであればF1.8くらいが理想です。カメラとセットで売っているキットレンズだとF4くらいが最小で、この値では思うようにぼけてくれません。
一眼レフはもっとぼけると思っていたけどそうでもないな、という経験があるかたもいるかもしれませんが、F4では狙ったようなボケ感は出せないので注意しましょう。
動いている被写体を撮りたい《F4~5.6》
動きのある被写体を撮影する場合、写真がブレてしま可能性があるので一般的なレンズのF値に設定されているF4~5.6がおすすめです。
F4~5.6は全体的にボケ感は少なく、明るさも適度に明るいので動いている被写体を撮るとき以外にも日常遣いがいい設定値です。
鮮やかな風景写真が撮りたい《F8以上》
風景写真は遠くにある対象までくっきりと詳細に映す必要があります。
この時に使用するのがF8という値です。
F8はレンズが持つ実力が最大限発揮されると言われている値ですので、F8に設定をして精密な写真を撮ってみましょう。
状況に応じてF8以上に設定しても構いません。
鮮やかな夜景が撮りたい《F8以上》
風景写真と同じようにF8以上が理想です。
ただ一方でF値を上げるとブレが起きやすくなるので、三脚を使用してしっかりカメラを固定するのがおすすめです。
F値の上げすぎにも注意
F値を上げることで全体的にピントの合うくっきりとした写真が撮れることを説明してきました。
ではF値を極限まで上げれば、より鮮明な写真が撮れるのかと言うとそうではありません。
F値を極端に上げてしまうと、今度は画質の低下が起こります。
F値を上げすぎると光が通る範囲が狭くなりすぎて光が広がってしまう「回析現象」が生じます。
あくまで絞りは適度な設定しましょう。
初心者の方はA(Av)絞り優先モードがおすすめ
初心者の方がF値についてしっかり学びたい場合は、A(Av)の絞り優先モードを使用しましょう。
絞り優先モードは自分が設定したいF値にするだけで、シャッタースピードなどの設定はカメラが自動で行ってくれるので、F値による狙った写真を撮りたいときに大変便利です。
まずは絞り優先モードを多用して、F値による写真の仕上がりの違いを体に覚えさせましょう。
僕も普段撮影する7割くらいが絞り優先モードで撮影をしています。
F値の設定をマスターして撮影スキルアップ!
F値の説明はいかがでしょうか。
F値の目的は《ぼかし》と《明るさ》の調整です。
慣れるまでは絞り優先モードを活用して感覚を掴んでいきましょう。
またF値とシャッタースピードの関係も重要ですので今後はシャッタースピードもしっかりと学んでいきましょう。
以上、<一眼レフ基礎知識|絞りとF値を理解して背景をぼかそう>という話題でした。
コメント
素晴らしい記事をありがとうございます。
一点教えていただきたいのですが、F値の面積について
絞り穴の面積=(半径)×(半径)×3.14=(F値)× (F値)× 3.14 ∝
とご説明されておりますが、F値は直径であれば、
F値/2× F値/2× 3.14になるのではないでしょうか。
お手隙のときに教えていただければと思いますm(__)m
コメント頂きありがとうございます。
ご指摘の通り、記載に不足がありましたため修正いたします。
伝えたかった意図としましては、カメラに入る光の量は、F値(絞り値)の2乗に反比例するということです。
f=焦点距離、D=有効直径とするとF値(絞り値)は焦点距離/有効口径であるからF=f/Dと表されます。
絞り穴の面積SはS=D/2*D/2*3.14=0.785*D^2=0.785*(f/F)^2となります(D=f/Fを代入)。
絞りを通過する光の量は、絞り穴の面積で決まるため、F値(絞り値)の2乗に反比例します。